「HondaJetで行こうACL」。アマチュア最強軍団が紡いだ夢への物語
今シーズンのJリーグが終わろうとしている。
J2は既に全日程を終え、J3もまずはギラヴァンツ北九州のJ2復帰が決定した。J1もフィナーレに向かっている。
皆さんの中にある今シーズンの日本サッカーにおけるハイライトは何だろうか。
準優勝に終わったアジアカップ?
Real Madridに移籍した久保建英?
神戸に現れたDavid Villa?
湘南の曹貴裁問題?
色々あると思う。
僕の中では、天皇杯で躍進した「アマチュア最強軍団」Honda FCだ。
実はコールリーダーのもっちとは友人で、その縁で埼玉スタジアムの南ゴール裏にも足を運んだ。勝利の瞬間も見届けた。なんなら途中ほんのわずかだけ、スネアも叩かせてもらった(下手すぎて申し訳なかったけど)。
あの日からしばらくはJリーグのサポーターの間で凄まじい反響があった。一夜にしてHonda FCの名は全国に轟き、次の対戦相手に決まっていた鹿島アントラーズのサポーターだけでなく、他のクラブのサポーターや有識者をも震え上がらせた。
あの大金星の興奮から少し時間が経った。
JFLで前人未到の4連覇を達成した直後、Hondaはベスト8で鹿島を前に力尽きた。それでも天皇杯での過去最高記録に並ぶ成績だ。
確かに元々選手の流出が少なく抑えられる環境下にあり、アマチュア選手の働く職場環境も整っているとはいえ、これだけの成績を残したことは後世に語り継がれるべきである。
そんな中、「あの日」のことを、もっちは今どう考えているんだろうか?
ふと気になった僕は、もっちに電撃インタビューを敢行した。結果的に、「あの日」意外のことも色々と話してくれた。
その全容をご覧いただきたい。
ーまずは、シーズンお疲れ様。そしてJFL4連覇おめでとう。
「ありがとうございます」
ー今シーズン全体を振り返ってみて。
「序盤は順調な滑り出しではありませんでした。しかしそこでズルズルといかず立て直せたのはHondaの強さだと思います」
ー連覇した期間の中では2016年以来の苦しいスタートだった。それでも優勝できたHonda FCの強さとは、サポーター目線から見ると何だと思うか。
「同じ企業で働いているからこその団結力かなと感じています。メンバーの入れ替りも少ないので連携面では他のチームに比べて有利に働く点があるかと思います」
ー今シーズン、並行して戦うことになった天皇杯本戦でも、大旋風を巻き起こしてベスト8まで行った。サポーターとしては感無量だったのでは。
「ベスト8という結果はもちろん嬉しいですが、それ以上に鹿島を倒せなかった悔しさの方が強いです」
ーその天皇杯について。静岡県予選でも準決勝ではJ3の藤枝相手にPK戦、決勝では同じくJ3の沼津にオウンゴールでの勝利。県予選も難しい試合だったのでは。
「毎年静岡県予選は苦しい戦いになります。2チームともJFLでの対戦経験があるので策を練られやすいのかもしれません笑」
ーそして本戦へ。「Honda旋風」は厚別の地から始まった。
「前半で2点取れたのが気持ち的に有利に働いたのかと思います。1度は追い付かれましたが焦ることなく闘ってくれました」
ーそして徳島にも勝利。この時点で県予選から合わせてJクラブを4つ倒した。そのときの心境は。
「徳島戦終わった段階ではまだあまり深くは考えてなかったです。法政大学も残っていたので笑」
ーそして伝説の浦和戦。埼玉スタジアムでの開催が決定したときに感じたことは。
「首都圏でやれることは注目度も高まるし嬉しかったですただ、スタジアムのハコの大きさに怯えてしまうのではないかという不安もなくはなかったです」
ーこの試合の前にRossoではどんな話が。
「特にこれと言った話は無かったですが、サポーター一堂ワクワクが止まらないといった感じでしたね」
ー試合当日、多くのサポが駆けつけた。
「浦和戦直前に九州で試合があったんですが、その時の応援席は3人だったんです。僕自身も行けなくて。だから埼スタに多くの人が集まったことで注目度の高さを実感しました」
ー幕の貼り方から応援エリアの構築まで、全てが体験したことのないものだったのでは。
「戸惑うこともありましたが、新鮮さを味わうのも天皇杯の醍醐味だと思って、楽しむことができました」
ーそして浦和にも勝利。誰もが予想を覆された。
「素晴らしい試合でした」
ーこの試合のターニングポイントは何だったと思うか。
「流れが浦和に傾きかけた60分過ぎ、古橋達弥のボレーシュートで見せ場を作ったシーンがありました。そこで再びHonda FCペースに戻せたのは大きかったです」
ー試合後、号泣する姿がメディアに大きく取り上げられた。
「お陰で声をかけていただく機会は増えましたが…恥ずかしいの一言です笑」
ーTwitterだけでも多くのメッセージを受け取った。目を通したときに感じたことは。
「嬉しかったのと同時に反響の大きさに驚いたものです」
ーこの浦和戦から、「HondaJETで行こうACL」の横断幕を出した。
「あの幕は予想以上の反響にビックリしました笑」
ー差し支えなければ、どんな想いがあったのか。
「浦和レッズの皆様、ACLはHonda グループのHondaJetで素敵な旅はいかがですか?というメッセージのつもりでした笑」
ーなかなかウィットの効いたセンスあるメッセージだった。
「面白い!という意見を貰えたのは嬉しかったです」
ーそして冒険の最終地はカシマサッカースタジアム。
「カシマが最終地になってしまったことが悔しいですね。最終地は国立にする気で闘っていたので」
ーそれでも0-1と健闘した。
「鹿島のワンチャンスで失点。あそこまで攻めても勝たせてくれないのが鹿島アントラーズというチームなんだろうなと思いましたね」
ー試合終了のときに感じたのは、やはり悔しさか。
「思うように応援が出来なかったのが悔やまれます。試合後数日は切り替えるのが大変でした」
ー天皇杯、特に浦和、鹿島の連戦で自身を取り巻く環境も大きく変わったのでは。
「自分自身はともかく、チームの知名度や注目度が上がるのは悪い話ではありません。そんなチームを応援できて良かったと思っています」
ー来季に向けて、Hondaサポーターとしての目標は。
「史上初のリーグ5連覇、そして元旦国立。その目標を叶えれるよう応援していきたいと思います」
ー最後に、このインタビューを読んでいる読者にメッセージを。
「JFLや地域リーグにも機会があれば足を運んで欲しいです!そこにしかない空気を感じることが出来ると思います!」
インタビュー後、リーグ戦や天皇杯のときの写真を貰いたいとお願いしたとき、「インタビュー、こんなんでよかったですか?」と言いながら、数枚の写真を送ってくれた。その言葉と共に送られた数枚の写真からは、彼の実直で温厚ながらも奥底にある熱いHondaへの愛を感じることができた。
HondaJetがアマチュア最強軍団を乗せて中国や韓国、あるいはサウジアラビアやUAEに飛ぶのもただの絵空事ではない気がする。これほど素晴らしいクラブが、選手が、そして、もっちのような熱いサポーターがいる限り。